人と人を「つなぐ」架け橋
文/鈴木せいら 写真・構成/佐々木康弘
キャンパス・コンソーシアム函館とは
佐藤さんは、理系の高等教育機関関係者の多いサイエンス・サポートスタッフの中では、多少異色の存在かもしれない。函館市職員。大学では人文科学を学んだ、文系出身の人だ。2013年4月からキャンパス・コンソーシアム函館事務局に配属されたことにより、サイエンス・サポート函館(以下SSH)運営委員も担当することとなった。それまでは、庶務や経理といった市役所内での事務を主に担当。この異動によって、世界ががらりと変わった。
「この仕事を通して、たくさんの人と会うことが増えました。それまでの仕事内容とは、ずいぶん違います」
そもそも、キャンパス・コンソーシアム函館とは、どういった機関なのだろうか。函館市には、平成18年に策定した「大学センター構想」、函館の8つの高等専門教育機関が互いに連携することによって、総合大学のような機能を果たす大学群を創り上げようという取り組みがある。このために様々な活動を行っているのが、キャンパス・コンソーシアム函館だ。同組織は科学祭をはじめとするSSHの活動のほかに、「合同公開講座 函館学」や、各校の学生による合同研究発表会「アカデミックリンク」といった企画を主催している。佐藤さんは教育大学内でのキャンパス・コンソーシアムの仕事の他に、市役所で市民協働などの業務も兼任している。多忙を極めているはずなのだが、「大変だとは思わないようにしています」と笑う。どこまでも謙虚なひとだ。
人から人へ、大人から子供へ
SSHの活動に参加して、一年目は無我夢中のうちに過ぎたという。「今年は、もっと早い準備段階から積極的に携わって、科学祭をもっといいものにしていけたら、より多くの人に来てもらえたらと思っています」と熱意をこめて語る。佐藤さんの言動には、受動的な空気は微塵も感じられない。「函館のために」「もっと多くの人に知ってもらうために」と言葉を繰り返す。
SSHスタッフは、科学祭を盛り上げよう、科学祭を多くの函館市民に楽しんでもらって、各教育機関の持つ専門知識を地域に還元したい、という熱い情熱を持った人物ばかり。会議ともなれば、アイディアがとめどなく湧き上がってくる。しかし、それを実現させるためには、「実務に落とし込む」という佐藤さんの役割が非常に重要になってくる。夢を具現化するため、人と人を繋ぎ、函館市と企業を繋ぎ、専門家である大人たちと科学祭にやってくる子供たちを繋ぐ。その役目はまさに、架け橋。昨年度、佐藤さんが携わった「サッポロビールプレゼンツ・サイエンスライブ」や「コカ・コーラクイズ電車で行こう!」といったイベントは、大好評のうちに終わった。影の立役者である佐藤さんが、各企業に丁寧に働きかけをしてくれたおかげであると言っても過言ではないだろう。
父親の目で見た科学祭の意義
佐藤さんは、プライベートではふたりの男の子を持つお父さんだ。SSHの一員となるよりも前に、父親として、子供と一緒に科学祭イベントに参加していた。
「うちの子は、とにかく虫が好きで。昆虫のイベントでは楽しませてもらいました。講師がこの日のために捕まえてきたクワガタムシがもらえるんですよ。子供は、夢中になっていましたね」。子供の喜ぶさまを思い出して、顔をほころばせる。「親の立場として、子供に『これはどうしてなの?』と聞かれて説明することは、なかなか難しい。そんなときに、専門家から丁寧に説明を受けられる場があるというのは、本当にありがたいです。子供の興味の芽を上手に育てていける」
ご自身が関わったイベントのひとつ、コカ・コーラクイズ電車でも、「参加したお子さんたちが楽しかった!と笑顔で帰っていく様子を見ると、良かったなあと喜びを感じました。これがきっかけになって、函館の子供たちがいろんなことに興味を持ってくれたら、と思います」
2014年2月取材