今年初年度を迎える科学祭にかける思い
取材・執筆:細川 桜(北海道教育大学函館校 マスコミ研究会)
第二回目となる今回は、函館市役所企画部の長谷山裕一さんに、今年初年度を迎える科学祭にかける思いを伺った。
科学を文化に
函館市役所企画部企画管理課の主査である長谷山さんは、普段、函館の土地利用、函館圏公立大学広域連合、南北海道学術振興財団、キャンパス・コンソーシアム函館、新幹線対策室など、多岐に渡る事業に携わっている。そのため、名刺にはたくさんの肩書が。「市役所で担当がこんなにある方っているんですか?」と尋ねてみると、「最近はまた増えて、摩周丸の副担当になりました…。まぁ、これだけ担当があれば、初対面の人との話のきっかけにはなりますね(笑)。もともとは、建築技師ですよ」とユーモラスな人柄をのぞかせた。
長谷山さん自身も科学が好きなようだ。今年の1月31日に開かれた、南北海道学術振興財団が主催した「親子ロボットプログラミング教室」は、レゴのマインドストームを用いたパソコン教室で、長谷山さんが企画したものである。企画にあたって、長谷山さんは、子どもの心をつかむために、ドラえもんやガンダム、アトムの誕生について調べたのだとか。ちなみに、このパソコン教室は、参加人数が募集人数を上回る盛況ぶりで、参加者からは、「大変楽しい時間を過ごすことができた」という声が聞こえた。
そんな長谷山裕一さんに、科学祭への思い入れを伺った。
科学祭は、“科学に対するアレルギーがなくなればいい”という思いから始まった。そこから、科学の功罪やリテラシーについて考えていくことが目的だ。スローガンは、“科学を文化に”。函館には、クリスマス・ファンタジーや野外劇、民俗芸術祭など文化的なイベントが沢山ある。「市民が楽しめるイベントの中に科学祭を入れたかった」と長谷山さん。東京で開催された科学祭に足を運び、その面白さを実感した。
科学祭初年度に向けて
折しも、今年は、ガリレオ・ガリレイが天体望遠鏡を用いて初めて天体観測をしてから400年目、ダーウィンの『進化論』が発表されて150年目に当る。このような、科学の節目の年に、科学祭は初年度を迎えることになる。
科学祭という言葉は、函館市民にとっては、聞きなれない言葉だ。科学祭に馴染みのない函館市民を、どのようにして引き込むかが、初年度の重要なポイントになってくるだろう。それに対して、「何回か繰り返していくうちに、函館に定着してくれればいい。まずは、科学祭に参加する実行委員が楽しむことが大切。
今、実行委員会はとてもいい雰囲気なので、それを参加者も感じてくれるはず。そうして、『この時期には、いつも科学祭がある』と思ってもらえるようになりたい。観光客も大切だが、より多くの市民に参加してほしい。また、誰でも参加でき、誰でもスタッフになれる祭りにしたい。そうすることが、人材育成にもつながる」と話す。
科学祭は、科学祭と市民を結びつけるために、ポスターなどを作って市民に呼び掛けを行っている。市役所に務める長谷山さんは、まず、市役所内で科学祭の認知度を上げ、それから外に発信していきたいという。また、はこだて・エコフェスタを主催している、市役所の環境部と相互協力をして、内部から外部へ発信していくことも考えているのだとか。
科学とは考えること
長谷山さんが、科学祭に期待することは、参加者が科学祭を通して“科学って何だろう?”と問うことだ。「科学とは考えることだと思う」。人間は考えなくても生きていける。しかし、考えることで、それは本当に必要なものなのか、未来に、平和につながるものなのか、ということが見えてくる。
そして、考えることは楽しいことだ。例えば、何気なくテレビを見ながら、どうしてテレビは映るんだろう?と考えてみる。「日常のふとした瞬間に、考えをめぐらせることって、どことなくワクワクするものではないだろうか」。
今後、函館をどのような街にしていきたいか、という問いに、「私達のミッションは、函館市民が幸せになることと、函館がより良い街になること」と話す長谷山さん。そのためには、特定の人間が動くのではなく、函館市民が皆で考え、皆で実行していくことが必要だろう。
そして、それは地域のネットワークがあってこそ成し得ることだ。科学祭が、地域のネットワークを広げるための一つのきっかけとなることを期待したい。
2009年5月取材